GUIDE 08
平均CPSに関する事実 — なぜ上位何%かを表示しないのか
ネットに出回る平均CPSの数値の限界、フィンガータッピングテストなど実際の研究が何を測ったのか、記録を正しく比べる方法を解説します。
CPSテストをすると「このくらいなら速いほう?」と気になるものです。ネットには平均CPSはいくつ、という数値がたくさん出回っていますが、CPSメーターはパーセンタイルやランクを表示しません。その理由と、参考にできる実際の研究をまとめました。
ネット上の平均CPSの数値
多くのCPSサイトが平均値やランク表を掲げていますが、ほとんどは 誰がどんな機材で何秒間、どのテクニックで測ったのか を明らかにしていません。サイトの訪問者はもともとクリック速度に関心のある人が多く、一般の人々を代表してもいません。測定時間(1秒と60秒)が違うだけでも値が大きく変わるので、条件の違う数値と比べると誤解が生まれます。
研究で使われるフィンガータッピングテスト
神経心理学には フィンガータッピングテスト(Finger Tapping Test) があります。ハルステッド・レイタン神経心理学検査バッテリーに含まれる検査で、手を板に置き、人差し指で機械式カウンターのキーを10秒間できるだけ速く叩く試行を何度か繰り返して平均を出します。運動速度や脳機能の評価に使われます。
- Ruff と Parker(1993)は、16〜70歳の成人360人を性別・年齢・教育水準で分けて、この検査の基準値を作成しました。女性のタッピング速度は男性より遅く、特に高齢層で差が大きく、教育水準が高いほど速い傾向がありました。
- Lima ら(2024)は、18〜74歳の健康な成人176人のスマートフォンでのタッピング(30秒)データを公開しました。著者自身も、このサンプル数では年齢別の基準値を定めるには不十分だと述べています。
こうした研究では、検査機器、手の姿勢、測定時間が厳密に決められています。マウスのクリックはボタンの重さ、クリックのテクニック、測定時間がすべて異なるため、検査の基準値をCPSの記録にそのまま当てはめることはできません。
CPSメーターが表示するもの
- モード(時間 × 入力方法)別の 自己ベスト
- 直近20回の 記録の推移
- 速度を維持できたかを示す 区間ごとのグラフ と、リズムの均一さを示す 間隔の分布
根拠の明確な比較基準が見つかれば、出典とともに追加します。
記録を正しく比べる方法
- 自分自身と比べましょう。同じモード・同じテクニック・同じマウスで何日か測り、推移を見ます。
- 友だちと比べるなら、同じサイト・同じ時間モードで測り、どのテクニックを使ったかも伝えます。
- 1回のベスト記録より、何回かの平均のほうが実力をよく表します。
参考文献
- Ruff, R. M., & Parker, S. B. (1993). Gender- and age-specific changes in motor speed and eye-hand coordination in adults: Normative values for the Finger Tapping and Grooved Pegboard Tests. Perceptual and Motor Skills, 76(3), 1219–1230. doi:10.2466/pms.1993.76.3c.1219
- Lima, R. C. et al. (2024). Dataset of Smartphone-Based Finger Tapping Test. Scientific Data, 11, 1263. doi:10.1038/s41597-024-04052-y